「うーん、奥行きが足りない」
嫁さんと息子から言われる前に、自分から言い放った。
自覚している。僕が作るカレーには奥行きと深みが足りない。
僕のカレー道はコロナ禍とともに始まった。
在宅勤務が増えた去年の春から、晩御飯でカレーを作るようになった。自分はほとんど料理をしないので、突然始まった僕の奇行に、嫁さんも「どうせすぐ飽きるでしょ」 と思っていたと思うが、意外にも細々とこの新しい習慣は続いている。週1回とまではいかないが、月に2,3回は作っているのではないか。
腕前のほうは、徐々に上手になってきたが、まだまだ納得できるレベルには達していない。
いつも作るカレーは、市販のルーや小麦粉を使わず、じっくり炒めた玉ねぎにスパイスで味を作る、いわゆるインド風のスパイスカレーだ。
まずはカルダモン、クローブ、シナモン、しょうが、ニンニクを炒め、そこに細かく刻んだ玉ねぎを入れ、15分ほどキツネ色になるまで強火で炒める。そこにトマト缶と塩を加え、水分が飛ぶまで炒めたらスパイスを加える。スパイスは、ターメリック、コリアンダー、クミン、カイエンペッパー。そして最後に鶏肉などの具材を入れて10分煮込んで、出来上がり!
こうやってレシピを書くと、なかなか、それっぽいではないか。
でも、まあ、買ったカレー本に載っているレシピ通りに作っているだけだ。使っているスパイスも、さも昔から知っている感じで書いているが、ほとんど一年前に覚えたものばかりだ。笑
最初のうちは、息子からは、
「このカレーはカレーっぽくない。カレー味のトマトシチューだ」と言われた。
散々である。でもまあ言いたいことは分かる。
レシピ通りのスパイスの量を入れているはずなのに、自分の作るカレーはいつもカレー感が足りないのだ。カレーなんだから、せめてカレー感は欲しいものだ!
カレー感が足りない原因は、スパイスを入れるタイミングが悪いのか、スパイスを炒める時間が短いのか、はたまた別の理由があるのか、まだ自分の中でも答えが出ていない。
もうひとつの大きな課題は、冒頭の「味の奥行き」である。
この課題の解決策はまったく見つかっていない。お手上げである。最近では、最後にケチャップか醤油を加えるという、自分の中では反則技と認定している方法で、なんとかごまかしている。
実は、この課題の根本の原因は、自分でうっすら気づいている。
そう、原因は自分にある。しかも3つもある。
まずひとつめとして、自分は反省が足りない!
毎回のカレーの出来をしっかり振り返ることがないのだ。なぜなら、出来上がったカレーと一緒に必ずビールを呑むからだ。途中で今日のカレーの出来がどうでも良くなってしまう。これではスキルが積みあがらない。
ふたつめは、毎回、作り方を微妙に変え過ぎている!
例えば、玉ねぎの炒め方だけは固定しておけば、その他の箇所で違いを出せば、前回との仕上がりの違いの理由が明確になるのだが、玉ねぎの炒め方自体も毎回微妙に変えてしまうため、前回との違いがどこに起因しているか、まったく分からなくなるのだ。適当すぎる。
3つめは、一番大事なこと。自分がどこを目指しているのか定まっていない!
自宅でカレーを作るようになって以来、外食でもカレーを食べることが増えた。絶品のカレーに何度も出会った。しかし、どのカレーも当然美味しくて、目指したいカレーがひとつに定まらないのだ。困ったものだ。
目指したいカレーが定まらないのは、僕のせいではなく、どんなカレーでも美味しくなってしまう、むしろカレーのほうに原因があるのではないか!
まあ、そんなこんなで、カレーの腕前は上げたいけれど、あまり考えすぎず気楽に楽しむのが僕のカレー道。
コロナ禍で始まった僕の珍道中のカレー道は、まだしばらく続きそうだ。